My 余生 diary:介護の日々を思い出しながら・・・

施設にお世話になって12年目に亡くなった母の介護の日々を写真とともに懐かしみながら「余生日記」を綴ります

海を見てきた・・・

田植え後の、少しずつ稲が伸びてきて、それでもまだ水に空の色や雲の動きが見える・・・そんな爽やかなころ、思い出すこと。


おばあちゃんがね、
海を見てきたのよ~♪
って言ってたの。
どこの海? って聞いたら
ほらあそこの・・・ って。
ぶぅみぃちゃんが来てる時なら
ああ、海にドライブに行ってきたんだ・・・ って思うけど
おばあちゃんひとりでしょ、まさかねぇ、ここからじゃ海は無理よねぇ。。。


母がいつもお世話になっていたすぐご近所の美容室のAさんから、母をこちらの施設に連れてきてだいぶ経ってからお会いしたときに聞いた話。


聞いたときは、散歩が好きで毎日、下手をすると朝夕散歩していた母がなにか勘違いとか、いややっぱりボケてきていたんだ・・・と思っただけだった。


ずっと頭の片隅に残っていたこのこと、もしかしたら・・・
ちょっと歩けば水田が広がるところの畦道を、母は以前は犬を連れて、犬がいなくなってからはひとりで散歩していた。田植えしてしばらくは水田に空や樹々、畦道の草も風になびくのが映り、水もさざなみをうつ。
それを眺めて、母は“海❣”と思ったのではないか。


母は、鎌倉・材木座の海の近くで生まれ育った。父と結婚するまで、その大きな家で大家族に「ばあや」や「ねえや」を含めてのんびりゆったり暮らしていた。
祖父は横浜の会社から帰ると、夏には家族を連れて必ず毎夕浜辺に夕涼みに出かけたという。結核を患っていた娘(母の姉)の養生のためもあったのだろう。
そんな「海 だい好き♡」の母だったから、波打つ水田が“海”に見えたのではないか・・・


こうして散歩しながら一人暮らしをしていた母が、
もう一度だけゆっくり鎌倉に行ってきたいわ~♪ ねぇ、あなたもいっしょに行きましょうよ」
そのころわたしは面倒で、
鎌倉はいまじゃ観光地ですごい人なんですって❣ 東京のおにいちゃんのとこにしばらく行って、おにいちゃんに連れってってもらえばいいわ・・・


いまになって思えば、少し無理してでも連れていけばよかった・・・。




(2008/11/20)
水田があった一人暮らしの地で、地域の特養ホームが母の個展を開いてくれた。
このときが2回目。50点くらいは展示していただいた。
母を連れてご挨拶がてら見に行った。
絵は母が描いた日本画